イノベーションのジレンマ 増補改訂版 Harvard business school press

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組織の能力は二つの要素によって決まる。一つはプロセスである。これは、組織の人員が習得した労働力、エネルギー、原材料、情報、資金、技術といった「インプット」を価値の向上という「アウトプット」に変える方法である。もう一つは組織の価値基準である。これは、組織の経営者や従業員が優先事項を決定するときによりどころとする基準である。

「顧客の意見に耳を傾けよ」というスローガンがよく使われるが、このアドバイスはいつも正しいとはかぎらないようだ*。むしろ顧客は、メーカーを持続的イノベーションに向かわせ、破壊的イノベーションのリーダーシップを失わせ、率直に言えば誤った方向に導くことがある**。

破壊的技術は、従来とはまったく異なる価値基準を市場にもたらす。一般的に、破壊的技術の性能が既存製品の性能を下回るのは、主流市場での話である。しかし、破壊的技術には、そのほかに、主流から外れた少数の、たいていは新しい顧客に評価される特長がある。破壊的技術を利用した製品のほうが通常は低価格、シンプル、小型で、使い勝手がよい場合が多い。

競合する複数の製品の性能が市場の需要を超えると、顧客は、性能の差によって製品を選択しなくなる。製品選択の基準は、性能から信頼性へ、さらに利便性から価格へと進化することが多い。

実績ある企業は、いつも新しい技術を確立された市場に押し込もうとするが、成功する新規参入企業は、新しい技術が評価される新しい市場を見つける。

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